ペットと在宅避難はできる?家が安全なら選べる。物資と情報は、避難所へ取りに行く
地震のあと、ペットを連れて避難所へ行くか、家にとどまるか。迷う飼い主は多いと思う。 じつは、家の安全が確かめられたら、家で避難生活を送る「在宅避難」も選べるんじゃ。 令和6年の能登半島地震でも、民間団体の調べで珠洲市・輪島市・能登町の3市町だけで131世帯のペットを飼う家が在宅避難をしておった。 ただし、在宅避難には弱いところもある。食べ物や水、情報が届きにくいことじゃ。 この記事では、環境省のガイドライン改訂案と能登の記録をもとに、在宅避難を選べる条件と、家で過ごすための備えを順番に書いていくぞ。
図解: 在宅避難の3つの決まりごと
在宅避難で守ることを1枚にまとめた。印刷して冷蔵庫に貼っておくと、揺れのあとに家族みんなで同じことを確かめられるぞ。いちばん近い指定避難所の名前を、余白に書き込んでおいてくれ。
結論:確かめる・取りに行く・ためておく
先に答えを書いておく。ペットと在宅避難をするなら、この3つを守ってくれ。
在宅避難を選べるのは、家がこわれるおそれがなく、住み続けられると分かったときだけじゃ。危ないと思ったら、迷わず家を出る
家にいると、配られる物やお知らせが届きにくい。近くの指定避難所へ、自分から取りに行く
ペットのフードと水は少なくとも5日分、できれば7日分以上。ふだん使いながら買い足していく
在宅避難は「避難所へ行かなくていい」という意味ではない。寝る場所は家、物資と情報は避難所。この2つを行き来するのが在宅避難なんじゃ。
在宅避難とは、どんな避難か
環境省は、2026年6月に「人とペットの災害対策ガイドライン」の改訂案を出して、みんなの意見を集めた。この改訂案に、在宅避難の意味がこう書いてある。
地震などの発災後、自宅の安全性が確認され、自宅で継続して居住できると判断した場合に、避難所などではなく、自宅で避難生活を送ることを在宅避難という。避難生活の基盤が自宅にあれば、食事や入浴などの支援を避難所等で受けていたとしても在宅避難にあたる。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案(2026年6月 パブリックコメント資料)
つまり、ごはんやお風呂を避難所で受けていても、暮らしの中心が家なら在宅避難じゃ。家にこもりきりになる、という意味ではない。
改訂案では、ペットのいる家の避難生活の形として、次のようなものが挙げられておる。
- 飼い主もペットも家にとどまる。いちばんふつうの在宅避難じゃ
- 飼い主は避難所、ペットは家。避難所から家に通って世話をする。ただし、家がこわれるおそれがあるときは、このやり方はやめて、ペットと一緒に避難する
- 車の中で過ごす。在宅避難と同じく、物資と情報は避難所で受け取る。体の負担に気をつける(あとで書く)
ほかにも、避難所で一緒に過ごす形などがあり、改訂案は地域や災害の状況によって選べる形はちがうから、自分の状況をふまえて選ぶように書いておる。ひとりで決めにくいときは、家族や親戚、信頼できる知人と相談してもよい、ともある。
能登半島地震で、家にとどまった人たち
環境省が令和7年9月にまとめた能登半島地震の記録集には、ペットを飼う人の在宅避難の様子も載っておる。民間団体へのアンケートで集めた数字で、1月末の時点(能登町だけは2月末)のものじゃ。
犬を飼う家が12世帯、猫を飼う家が10世帯、そのほかが1世帯、何種類も飼う家が3世帯
3市町でいちばん多い。動物の種類ごとの内訳は記録されておらん
犬を飼う家が6世帯、猫を飼う家が15世帯
では、なぜ家にとどまったのか。記録集には、在宅避難を選んだわけが、こう並んでおる。
- 避難所はペット不可と断られたから
- 避難所にいたが、ペットがいることで気を遣うから(吠える・鳴くから)
- ケージに入ったことがない、しつけができていない
- 自宅の方がペットのストレスが少ないから
- 避難所での集団生活が嫌だから
「ペットのために家を選んだ」人もおれば、「避難所に行けなかったから家にいた」人もおったわけじゃ。
支えも少しずつ届いた。石川県は、市や町の物資の倉庫や避難所にペット用の物資を配って、在宅避難の人にも届くようにした。七尾市はペットケージを配り、志賀町はペット用のトレーラーハウスを置いた。
一方で、記録集は課題も書いておる。避難所の見回りでは主に避難所の管理者から話を聞いたため、在宅避難や車中泊の飼い主からは、直接ようすを聞きにくかった。そして、ペットが理由で避難所に行かない人を受け入れる場所や物資を考えた避難所は、少なかったそうじゃ。
家にいると、まわりから見えにくくなる。困っていても、声を上げなければ気づいてもらえんこともあるんじゃ。じゃからこそ、在宅避難は「取りに行く避難」だと覚えておいてほしい。
選べるのは、家が安全なときだけ
在宅避難を考えてよいのは、家がこわれるおそれなどがなく、家の安全が確かめられたときじゃ。改訂案は、ペットと暮らす人の避難について、こうも書いておる。
自治体によっては、堅牢なマンションなどでの在宅避難を推奨しているところもあるので、あらかじめ、それぞれの自治体における避難のあり方を確認しておくことも必要になる。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案(2026年6月 パブリックコメント資料)
大きな町では、被災した人が避難所に入りきらないこともある。そのため、じょうぶな建物に住む人には在宅避難をすすめている自治体もあると改訂案にある。自分の町がどう考えているかは、市や区のホームページや防災の手引きで見ておいてくれ。
そのうえで、在宅避難にはペットにとってよいところもある。改訂案は、猫のように長いあいだケージに入れておくのがむずかしく、場所が変わるとストレスを感じやすい子には、在宅避難のほうが負担が少ないと書いておる。猫と暮らす家は、まず在宅避難ができる家かどうかを考えておくとよいじゃろう。
ただし、ここをまちがえてはいかん。津波や土砂災害、川の氾濫のおそれがあって避難の呼びかけが出たら、在宅避難は選べん。そのときは、ペットを連れてすぐに逃げる「同行避難」じゃ。在宅避難は、揺れがおさまって、家にいても安全と分かってから選ぶものなんじゃよ。
物資と情報は、自分から取りに行く
在宅避難でいちばん気をつけたいのが、ここじゃ。改訂案は、はっきり書いておる。
飼い主とペットが自宅に留まる在宅避難の場合は、避難所の生活者と比べ支援物資や情報を入手する機会が少ないため、支援物資や情報を入手するために、必要に応じて指定避難所などに行くことも必要となる。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案(2026年6月 パブリックコメント資料)
避難所には、水や食べ物、お知らせの紙、ペット用の物資が集まる。家にいると、それが自分の家まで届くとはかぎらん。じゃから、ときどき避難所へ顔を出して、次のことを確かめてくれ。
- 水や食べ物、ペット用の物資が配られていないか。能登では、県が避難所にペット用の物資を配った
- お知らせが出ていないか。給水の場所や時間、ペットの相談窓口の連絡先など
- 家で避難していることを伝えておく。改訂案は、避難所の側にも在宅避難の人の状況をつかんで、物資の配り方やお知らせのしかたを工夫するよう求めておる。知ってもらうことが、支えの入り口じゃ
ペットのことで困ったら、避難所の受付で「ペットの相談はどこにすればいいか」を聞くとよい。能登では、石川県獣医師会が巡回の診療や物資の支援、ペットの一時預かりをしておった。こうした支えも、知らなければ使えんからの。
家で過ごすための備え
在宅避難は、家にためておいた物で何日しのげるかで、楽にも苦しくもなる。改訂案は、避難先で使うペット用品を3つの優先順位で示しておる。いちばん上に来るのは、次の物じゃ。
- 療法食、薬(治療中の場合)
- ペットフード、水(少なくとも5日分、できれば7日分以上)
- キャリーケースやケージ(猫や小さな動物には欠かせない)
- 予備の首輪、リード(伸びないもの)
- ペットシーツ、トイレ用品(猫は使い慣れた猫砂か、使ったあとの猫砂の一部)
- 食器(フードと水用)
ためかたは、ローリングストックがすすめられておる。ふだん食べているフードを少し多めに買っておき、古いほうから使って、使った分を買い足す。これなら、いざというときもいつもの味で、おなかをこわしにくい。何日分をどう数えるかは、ペットフードの備蓄は何日分?にくわしく書いたぞ。
それから、在宅避難で困りやすいのがトイレと水じゃ。断水すると、ペットのトイレの片づけにも水が要る。ペットシーツとビニール袋は多めに。重い水は、改訂案のとおり、すぐ持ち出す物と、あとで取りに行く物に分けて置いておくとよい。
車の中で過ごすときの注意
ペットがいるからと、車の中で寝起きする人もおる。改訂案は、車で過ごすときの注意をこう書いておる。
飼い主は、手足を伸ばして眠れる状態を作り、遮光や換気の対策をとるなど、エコノミークラス症候群や熱中症への対策と注意が必要である。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案(2026年6月 パブリックコメント資料)
せまい座席で何日も同じ姿勢でいると、足に血のかたまりができるエコノミークラス症候群になることがある。座席を倒して足をのばし、ときどき車の外で体を動かしてくれ。
ペットも熱中症になる。改訂案は、ペットだけを車の中に残さないこと、やむをえず残すときは短い時間にして、車の中の温度にいつも気をつけ、飲み水を十分に用意しておくよう書いておる。夏の昼間の車の中は、思っているよりずっと暑くなる。長く離れるときは、ペットを別の安全な場所へ移すことじゃ。
テントで過ごす場合も、物資と情報は避難所で受け取るのは同じじゃ。改訂案は、テントの形によっては風を受けやすく、地面にしっかり留められていないと強い風で飛ばされるおそれがあるとも書いておる。車もテントも、家に戻れるまでのつなぎと考えて、体の具合が悪くなったら、無理をせず避難所へ移ってくれ。
困ったら、ペットの相談窓口と一時預かり
大きな災害のあとは、自治体や獣医師会などがペットの相談窓口を作ることがある。改訂案では、この窓口の連絡先を、避難所の管理者や市区町村の担当だけでなく、在宅避難をしている人にも知らせることになっておる。窓口では、受けられる支援、避難所での飼い方、ペットの一時預け先などの情報を出す、とある。
在宅避難が長くなると、家の片づけや仕事で出かけるあいだ、ペットをどうするかに困る。改訂案には、こうした昼間だけの一時預かりを、避難所にいる人だけでなく在宅避難の人も望むことが多いと書いてある。預けるときは、預ける期間、連絡先、お金のことを紙に書いて、はっきりさせておくことが大事じゃ。
窓口ができたかどうかは、避難所の掲示や自治体のホームページで分かる。家にいるときこそ、こまめに見に行く。在宅避難は、この「見に行く」がいちばんの仕事なんじゃよ。
間違えやすい3つ
改訂案は、在宅避難の人も必要に応じて指定避難所に行くよう書いておる。寝る場所が家でも、物資と情報は避難所じゃ
能登では「避難所はペット不可と断られた」人もおった。じゃが、受け入れ方は避難所ごとにちがう。前もって自分の町の考えを調べておくのが先じゃ
津波や土砂災害、川の氾濫のおそれで避難の呼びかけが出たら、家にいてはいかん。在宅避難は、安全を確かめたあとで選ぶものじゃ
やらなくていいこと・やってはいけないこと
在宅避難は、がんばりすぎると続かん。やらなくていいこととやってはいけないことを先に知っておいてくれ。
まず要るのは、いつものフードと水、トイレ用品、ケージ。ほかの物は、これがそろってから考えればよい
避難所でごはんやお風呂の支援を受けても、在宅避難にかわりはない。使える支援は使ってよい
家がこわれるおそれがあるのに、避難所から世話をしに通うのはやめる。改訂案も、そのときはペットと一緒に避難するよう書いておる
それから、避難の呼びかけを聞かずに、家に残ることを先に決めてしまわないことじゃ。在宅避難は、安全を確かめたあとで選ぶもの。順番を逆にしてはいかん。
家で過ごせるのは、家が守ってくれるからじゃ。家が安全でなければ、在宅避難はできん。ペットを守りたい気持ちが強い人ほど、まず自分の身の安全を先に考えてほしい。
今日できる3つのこと
最後に、今日すぐできることを3つだけ。どれも10分で終わるぞ。
市や区のホームページで、在宅避難をすすめているか、ペットはどう受け入れるかを見ておく。いちばん近い指定避難所の場所も
いま家にあるフードと水が何日分あるかを数える。5日分に足りなければ、次の買い物で1袋多めに
背の高い家具は倒れないか、ケージの近くに落ちてくる物はないか。家が安全であることが、在宅避難のいちばんの条件じゃ
よくある質問
Q. ペットと在宅避難はしてもいい?
A. 家の安全が確かめられたら、選んでよい。環境省のガイドライン改訂案も、家の安全が確認された場合に、家で避難生活を送ったり、避難所から家に通って世話をしたりする方法を挙げておる。ただし、家がこわれるおそれがあるときや、避難の呼びかけが出ているときは、ペットと一緒に避難してくれ。
Q. 在宅避難だと、支援の物資はもらえない?
A. もらえる。じゃが、家まで届くとはかぎらん。改訂案は、在宅避難の人は避難所の人より物資や情報を手に入れる機会が少ないから、必要に応じて指定避難所に行くよう書いておる。能登では、石川県が避難所などにペット用の物資を配って、在宅避難の人にも届くようにしておった。
Q. 猫は在宅避難のほうがいい?
A. 改訂案は、猫のように長いあいだケージで過ごすのがむずかしく、場所が変わるとストレスを感じやすい子には、在宅避難のほうが負担が少ないと書いておる。ただ、それも家が安全であればの話じゃ。避難するときに備えて、キャリーに慣らしておくことも忘れんでくれ。
Q. 在宅避難のために、フードは何日分ためておけばいい?
A. 改訂案は、ペットフードと水を少なくとも5日分、できれば7日分以上としておる。ふだんのフードを少し多めに買い、古いほうから使って買い足すローリングストックで続けるとよい。療法食や薬のある子は、それを最優先にな。
出典
- 環境省「令和6年能登半島地震における被災動物対応記録集」(令和7年9月)
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年3月)
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案(2026年6月 パブリックコメント資料)
本記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。ガイドラインの改訂版は2026年10月時点で正式公表前のため、改訂案の内容は変わる可能性があります。在宅避難のすすめ方やペットの受け入れ方針は自治体ごとに異なるため、お住まいの自治体の案内をご確認ください。避難の判断はお住まいの自治体が発表する避難情報に従ってください。ペットの体調や療法食については、かかりつけの獣医師にご相談ください。