コラム — ペットの防災 公開: 2026/10/26

犬と避難所で過ごすには?「待て」とクレート、それと鑑札。今日から練習できる

犬と一緒に避難所へ行く。頭では分かっていても、「うちの子は吠えるから」「ケージに入ったことがないから」と、ためらう飼い主は多いと思う。 令和6年の能登半島地震では、環境省が見回った避難所で犬43頭が飼い主と一緒に過ごしておった。そして家にとどまった人の中には、「ケージに入ったことがない、しつけができていない」ことを理由に挙げた人もおった。 避難所で犬と過ごせるかどうかは、その日より前の、ふだんの練習で決まるんじゃ。 この記事では、環境省のガイドライン改訂案と能登の記録をもとに、犬と避難所で過ごすためのしつけ、体の手入れ、持ち物を順番に書いていくぞ。

図解: 犬と避難所へ行く前の3つ

ふだんの練習でできることを1枚にまとめた。印刷して、犬の散歩バッグに入れておくと、できたものに印をつけていけるぞ。

犬と避難所へ行く前の3つの図解。1、しつけ:待て、おいで、むだに吠えない、ケージに慣れる、決まった場所でトイレ。2、健康:狂犬病予防注射と各種ワクチン、ノミ・ダニ・フィラリアの予防、シャンプー。3、身元:鑑札と注射済票、迷子札、マイクロチップの登録。

結論:しつけ・健康・身元

先に答えを書いておく。犬と避難所で過ごすために、ふだんからやっておくことはこの3つじゃ。

しつけ

「待て」「おいで」、むだに吠えない、ケージに慣れている、決まった場所でトイレができる

健康

狂犬病予防注射と各種ワクチン、ノミやダニ、フィラリアの予防、シャンプーで体を清潔に

身元

犬は鑑札と狂犬病予防注射済票をつけるのが義務。迷子札とマイクロチップの登録も

どれも、避難所でまわりの人に迷惑をかけないためだけのものではない。改訂案は、しつけや社会化がペット自身のストレスを軽くすることにもつながると書いておる。練習は、うちの子を守るためでもあるんじゃ。

明るい居間の木の床で、白い靴下のそなえじぃがしゃがみ、片手をそっと前に出している。年老いた柴犬がおすわりをして、じっとそなえじぃの手を見ている。ひなたちゃんが横で同じようにおすわりをしている。
「待て」ができると、避難のときも、避難所でも、うちの子を守れるんじゃ。

能登の避難所で、犬はどう過ごしたか

まず、実際のようすを見てほしい。環境省は令和6年1月23日から2月14日にかけて、輪島市、珠洲市、志賀町、穴水町、能登町の119か所の避難所を見回った。そのうち56か所で、ペットと一緒の避難が確かめられておる。

犬 43頭

見回りで確かめられたペットは、犬43頭、猫22頭、そのほか4頭。犬がいちばん多かった

屋内で36頭

犬43頭のうち36頭は、体育館や教室、廊下などの建物の中で過ごしておった。車の中が5頭、駐輪場が2頭

同じ部屋が17か所

建物の中で飼っていた避難所のうち、飼い主と同じ部屋が17か所、別の部屋や玄関などが4か所

ここで知っておいてほしいことがある。記録集には、地震の前から決めていた避難所でのペットの受け入れ方針も載っておる。たとえば輪島市の方針には「犬、猫など動物類を室内に入れることは禁止」とあった。それでも実際には、輪島市の16か所の避難所で、43組の飼い主がペットと建物の中に避難しておった。

記録集によると、対象の17市町のうち、地震の前から避難所でのペットの受け入れ方針を決めていたのは13の自治体じゃった。中には、屋内には入れず、駐輪場や軒下などの外で過ごしてもらうと決めていた市もある。また、飼い主は避難所にいて、ペットは家で世話をしていた例も5か所の避難所で見られた。犬の居場所は、ひとつではなかったんじゃ。

つまり、決まりどおりにいくとはかぎらんし、決まりより受け入れてもらえることもある。どちらに転んでも困らんように、ケージの中で静かに過ごせる犬にしておくことが、いちばんの備えじゃ。

一方で、家にとどまった人のわけには「避難所はペット不可と断られたから」「吠える・鳴くから気を遣う」「ケージに入ったことがない、しつけができていない」が並んでおった。しつけができていれば、選べる道が増える。そう読めるじゃろう。家にとどまる避難については、ペットと在宅避難はできる?に書いたぞ。

そなえじぃ

ことばの話もひとつ。犬を連れて安全な場所まで逃げるのが「同行避難」、避難所で犬の世話をしながら過ごすのが「同伴避難」じゃ。同伴避難でも、同じ部屋で過ごせるとはかぎらん。くわしくは同行避難と同伴避難のちがいを見てくれ。

しつけ1:「待て」「おいで」と、むだに吠えない

改訂案は、犬のしつけと健康管理として、次の項目を挙げておる。

  • 「待て」「おいで」「お座り」「伏せ」などの基本的なしつけを行う
  • ケージなどの中に入ることを嫌がらないように、日頃から慣らしておく
  • 不必要に吠えないようにしつける
  • 人や他の動物を怖がったり攻撃的にならないように慣らしておく
  • 決められた場所や合図で排泄ができるようにする

なぜ「待て」と「おいで」が先なのか。改訂案は、災害のときにはペットがパニックになって、いつもとちがう動きをすることがあると書いておる。玄関を開けたとたんに飛び出す。がれきのそばで引っぱる。そんなとき、「待て」で止まり、「おいで」で戻ってくる犬は、逃げるときも迷子になりにくい。

避難所では、知らない人やほかの犬がすぐそばにおる。人や犬をこわがらないように、ふだんの散歩でいろいろな人や音に会わせておくとよい。むだに吠えないことも、まわりの人と気持ちよく過ごすために欠かせん。

練習は、1日5分でいい。うまくできたら、すぐにほめる。できないことを叱るより、できたことをほめるほうが、犬はよく覚えるものじゃ。吠えぐせや、人や犬へのこわがりが強いときは、ひとりで悩まず、かかりつけの動物病院やしつけの専門家に相談してくれ。

しつけ2:ケージとクレートに慣らす

避難所では、犬がケージやクレートの中で過ごす時間が長くなることが多い。改訂案は、避難所での飼い方として、ケージやキャリーバッグに慣れていることが必要だと書いておる。

慣らし方の基本は、クレートを「こわい箱」ではなく「安心できる寝床」にすることじゃ。

  • 扉を開けたまま、部屋に置いておく。中にいつもの毛布やおもちゃを入れて、自分から入るのを待つ
  • 中でおやつや食事をあげる。入ると良いことがある、と覚えてもらう
  • 扉を閉める時間を、少しずつのばす。最初は数秒から。落ち着いていられたら、ほめて出す
  • クレートごと車で出かけてみる。動く中でも落ち着いていられるかを確かめる

改訂案は、犬の避難用品としてクレートやケージ(できればハードタイプで扉のついたもの)を挙げておる。そして小さな犬は、逃げ出さないようにリードをつけたうえでキャリーケースに入れるよう書いてある。扉を開けたとたんに飛び出さないための工夫じゃ。古いプラスチックのキャリーは、分解したり扉が開いたりしないよう、ガムテープなどで周りを固定するとよいともある。

夕方の居間で、白い靴下のそなえじぃが床に座り、扉の開いたハードタイプのクレートの前でおやつを差し出している。年老いた柴犬が自分からクレートに入ろうとしていて、ひなたちゃんが中の毛布を整えている。
扉を開けたまま、中でおやつ。クレートは安心できる寝床だと覚えてもらうんじゃ。

しつけ3:決まった場所と合図でトイレ

避難所では、いつもの散歩道で好きなように用を足すことはできん。改訂案は、決められた場所や合図で排泄ができるようにすることを挙げておる。

練習のしかたは、たとえばこうじゃ。家の庭やベランダ、散歩の決まった場所で、用を足しはじめたら同じことばをかける。できたら、すぐにほめる。これをくり返すと、そのことばを聞くと用を足すようになっていく。ペットシーツの上でできるようにしておくと、外に出られないときも安心じゃ。

避難所では、うんちはすぐに拾って持ち帰り、おしっこのあとは水で流す。ビニール袋とペットシーツは多めに持っていくとよい。まわりの人が気持ちよく過ごせることが、犬と一緒にいられることにつながるからの。

晴れた朝の家の庭で、茶色のスニーカーのそなえじぃがしゃがみ、ペットシーツの上で用を足し終えた年老いた柴犬をほめている。ひなたちゃんがビニール袋を手に持ってそばに立っている。
決まった場所でできたら、すぐにほめる。避難所でも困らんための練習じゃ。

体の手入れ:ワクチン、虫よけ、シャンプー

避難所では、ほかの犬や動物と近くで過ごすことになる。改訂案は、ほかの動物と触れ合うことが多くなるので、病気がうつる心配も高くなると書いておる。そして、犬の健康管理として、次のことを挙げておる。

  • 狂犬病予防接種に加え、各種ワクチンを接種する
  • 犬フィラリアやノミ、ダニなどの寄生虫の予防、駆除を行う
  • シャンプーやトリミングで、体を清潔に保つ
  • 不妊・去勢を行う

不妊・去勢は、はぐれたときに子どもが増えないようにするためでもある。改訂案は、性的なストレスを軽くし、感染症を防ぎ、むだ吠えなどの困った行動をおさえる効果もあると書いておる。手術をするかどうかは、犬の年齢や体の具合もあるから、かかりつけの獣医師とよく相談してくれ。

もうひとつ、知っておいてほしいことがある。改訂案は、避難所や動物の保護施設で、ペットが下痢や嘔吐、食欲がなくなるといったストレスのしるしを見せることが報告されている、と書いておる。避難所では、ふだんよりこまめにうんちの様子、食べる量、元気さを見てあげてくれ。おかしいと思ったら、早めに獣医師に相談じゃ。ワクチンの記録や飲んでいる薬のことは、紙とスマホの両方に残しておくと、避難先の獣医師にも伝えやすい。

身元:鑑札と注射済票は義務

犬には、狂犬病予防法で決まった義務がある。改訂案にも、こう書いてある。

なお、犬の場合は狂犬病予防法に基づき、鑑札(自治体が発行する登録の証明)と狂犬病予防注射済票を飼い犬に装着する義務がある。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案(2026年6月 パブリックコメント資料)

鑑札は、市や区に犬を登録した証明じゃ。注射済票は、その年の狂犬病の予防注射を受けた証明。首輪につけておけば、避難所でも、はぐれたときにも、身元の手がかりになる。

ただし、自治体によっては特例の制度があり、環境省のデータベースに飼い主の情報を登録すると、マイクロチップが鑑札の代わりになって、鑑札を受け取らなくてよい場合もある、と改訂案は書いておる。自分の市や区がどちらかは、ホームページで確かめてくれ。

能登の記録では、保護された犬で身元の手がかりを身につけていたのは、ごく一部だけじゃった。迷子札とマイクロチップの登録については、災害でペットが迷子になったらにくわしく書いたぞ。

明るい玄関の上がり框で、白い靴下のそなえじぃがひざをつき、年老いた柴犬の首輪に、無地の小さな金属の札を2つ取りつけている。ひなたちゃんが無地の迷子札を手のひらにのせて差し出している。
鑑札と注射済票、それに迷子札。首輪は、うちの子の名刺入れじゃ。

犬の持ち物:首輪とリード、クレート、靴下

改訂案は、避難するときの犬の持ち物として、次の3つを挙げておる。

首輪とリード

逃げ出さないように。小さな犬はリードをつけたうえでキャリーケースに入れる

クレートやケージ

できればハードタイプで扉のついたもの。避難所でそのまま寝床になる

犬用の靴下やバンテージ

大きな犬を歩かせて避難するとき、がれきなどで足をけがしないために

避難先で使う物の優先順位も示されておる。いちばん上は、療法食と薬(治療中の場合)、フードと水(少なくとも5日分、できれば7日分以上)、キャリーやケージ、予備の首輪とリード(伸びないもの)、ペットシーツ、トイレ用品、食器じゃ。その次が、飼い主の連絡先やペットの写真、ワクチンやかかりつけの病院の情報。においのついたお気に入りのおもちゃも、犬を落ち着かせてくれる。

改訂案が予備のリードを伸びないものとしているのは、人の多い場所で犬を手もとに置いておくためじゃろう。大きな犬のフードや水のように重い物、大きな物は、逃げるときのじゃまになる。改訂案は、いったん避難して安全を確かめてから取りに行けるよう、屋外の倉庫や駐車場など、置き場所を工夫するようすすめておる。すぐ持ち出す物は、人の避難用品と一緒に玄関の近くへ。フードの数え方は、ペットフードの備蓄は何日分?を見てくれ。

明るい居間の木の床で、白い靴下のそなえじぃが座り、リュックに伸びないリード、ペットシーツ、食器、袋入りのフードを詰めている。年老いた柴犬が犬用の靴下をはかせてもらっていて、ひなたちゃんが靴下の片方を持って手伝っている。
大きな犬には靴下も。がれきの道から、うちの子の足を守るんじゃ。

間違えやすい3つ

避難所に行けば、犬と同じ部屋で過ごせる

能登では同じ部屋の避難所もあったが、別の部屋や玄関、車の中、駐輪場もあった。どこで過ごすかは避難所ごとにちがう

しつけは、避難所に着いてからでいい

知らない場所で、犬はいつもより落ち着かなくなる。ふだんできないことは、その日もできん。練習は今日からじゃ

鑑札は家にしまっておけばいい

鑑札と注射済票は犬につけておく義務がある。引き出しの中では、身元の手がかりにならん

やらなくていいこと・やってはいけないこと

犬の防災は、がんばりすぎると続かん。やらなくていいこととやってはいけないことを先に知っておいてくれ。

完ぺきなしつけを目指さなくていい

全部を一度にできなくてよい。まずは「待て」と「おいで」、クレートで落ち着くの3つから

高い防災グッズを買いそろえなくていい

いつもの首輪とリード、クレート、フードと水がそろえば、まず十分じゃ。予備のリードは伸びないものを1本

叱ってしつけてはいけない

大きな声で叱ると、犬はこわがって、かえって吠えることがある。できたらほめるをくり返す

それから、避難所では犬だけをつないで、長い時間そばを離れないことじゃ。知らない人に囲まれたり、ほかの犬に吠えられたりすると、ふだんおとなしい子でも驚いてしまう。家族で交代しながら、そばにいてあげてくれ。

そなえじぃ

避難所では、犬のことを好きな人ばかりではない。じゃが、静かに待てて、決まった場所でトイレができる犬なら、きっと受け入れてもらいやすくなる。うちの子の居場所は、ふだんの練習が作ってくれるんじゃよ。

体育館の一角の、仕切られたペット用のスペースで、白い靴下のそなえじぃがマットに座り、扉の閉まったクレートの中で静かに伏せている年老いた柴犬を見守っている。ひなたちゃんがそなえじぃのとなりに寄りそっている。
クレートの中で静かに休めたら、避難所でも、うちの子は大丈夫じゃ。

今日できる3つのこと

最後に、今日すぐできることを3つだけ。どれも散歩のついでにできるぞ。

「待て」と「おいで」を5分

散歩の前と途中で、「待て」と「おいで」を3回ずつ。できたら、すぐにほめる

クレートの扉を開けて置く

クレートを部屋に出して、扉を開けたまま中でおやつ。自分から入るのを待つ

首輪を見る

鑑札と注射済票、迷子札がついているか。首輪がゆるんで抜けないかも確かめる

よくある質問

Q. 犬と避難所へ行く前に、いちばん練習しておくことは?

A. 「待て」と「おいで」、そしてクレートで落ち着いて過ごすことじゃ。環境省のガイドライン改訂案も、基本のしつけとケージに慣らすことを挙げ、避難所ではむだに吠えないこと、決まった場所でトイレができることも必要だと書いておる。

Q. 避難所で、犬は飼い主と同じ部屋で過ごせる?

A. 避難所によってちがう。能登半島地震では、飼い主と同じ部屋で飼っていた避難所が17か所あった一方で、別の部屋や玄関、車の中、駐輪場で過ごした犬もおった。前もって自分の町の受け入れ方を調べ、どこで過ごすことになっても困らんように、クレートに慣らしておいてくれ。

Q. 避難所に連れて行く犬に、ワクチンは必要?

A. 改訂案は、狂犬病予防接種に加えて各種ワクチンを接種することを挙げておる。避難所ではほかの動物と近くで過ごすので、病気がうつる心配が高くなるからじゃ。ノミやダニ、フィラリアの予防もしておいてくれ。接種の時期は、かかりつけの獣医師に相談じゃ。

Q. 犬の鑑札は、避難のときもつけておくもの?

A. つけておく。犬は狂犬病予防法で、鑑札と狂犬病予防注射済票をつけておく義務がある。自治体によっては、マイクロチップの情報登録で鑑札の代わりになる特例もあるから、自分の市や区の案内を確かめてくれ。

  • 環境省「令和6年能登半島地震における被災動物対応記録集」(令和7年9月)
  • 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年3月)
  • 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案(2026年6月 パブリックコメント資料)
  • 狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)

本記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。ガイドラインの改訂版は2026年10月時点で正式公表前のため、改訂案の内容は変わる可能性があります。避難所でのペットの受け入れ方針は自治体・避難所ごとに異なるため、お住まいの自治体の案内をご確認ください。避難の判断はお住まいの自治体が発表する避難情報に従ってください。ワクチン、寄生虫予防、不妊・去勢手術、しつけの悩みについては、かかりつけの獣医師にご相談ください。