コラム — ペットの防災 公開: 2026/08/17

同行避難と同伴避難はどう違う?「一緒に逃げられる」と「一緒に過ごせる」は、別の話じゃ

「うちの市はペットの同行避難ができるって書いてあったから、安心」——。 じつはこれ、ペット防災でいちばん多い勘違いじゃ。 同行避難ができることと、避難所でその子と一緒に過ごせることは、まったく別の話でな。 知らずに当日を迎えると、避難所の入口で立ち尽くすことになる。 この記事では、環境省のガイドラインの原文にあたりながら、この2つの言葉を整理していくぞ。

図解: 同行避難と同伴避難のちがい

先に全体像を1枚にまとめた。言葉の意味と、避難所での4つの過ごし方じゃ。 自治体に問い合わせるとき、これを手元に置いて聞くと話が早いぞ。

同行避難と同伴避難のちがいの図解。同行避難は災害発生時にペットを同行し安全な場所まで避難する避難行動のこと。同伴避難は避難所等で飼い主がペットを飼養管理する状態のこと。同伴避難は4つに分かれる。同室飼養は飼い主と同じ部屋、別室飼養はペット専用の別室、屋外飼養は屋外のテントや軒下、ペットのみ車中飼養は車の中。事前に確認する3つは、受け入れの可否、飼養場所のタイプ、必要な持ち物とルール。

結論——「行動」と「状態」のちがい

むずかしい話ではない。この2つは、指しているものの種類がちがうのじゃ。

同行避難=行動

ペットを連れて、安全な場所まで移動すること。「逃げる」という動きを指す言葉。国が推奨しているのはこちらじゃ

同伴避難=状態

避難所に着いたあと、そこでペットを飼養管理している状態のこと。「過ごす」という状況を指す言葉

つまり、同行避難はゴールではなく、スタートじゃ。 無事にたどり着いたそのあと、その避難所でどう過ごすことになるのか——そこが同伴避難の話になる。 そして厄介なことに、後者は避難所ごとにまったく違う

同行避難=一緒に「逃げる」行動

環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」では、同行避難はこう定義されておる。

災害発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、安全な場所まで避難する「避難行動」のこと。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」

注目してほしいのは「避難行動」という言葉じゃ。行き先での過ごし方には、一切ふれておらん。 そして同じガイドラインには、この定義のすぐあとに、わざわざこう但し書きが添えられておる—— 「同伴避難とは意味が異なることに留意が必要」と。 国の側も、ここが誤解されやすいと分かっているわけじゃな。

なお、同行避難が推奨される理由は、動物がかわいそうだから、だけではない。 東日本大震災では、いったん避難した飼い主がペットを連れに自宅へ戻り、津波に巻き込まれた例があった。 置いていけば、あとで取りに帰りたくなる。それが人の命を危険にさらす。 さらに放浪した犬猫が繁殖し、地域の生態系や住民の安全に影響した例も報告されておる。 同行避難は、人の安全のための仕組みでもあるんじゃ。

家の玄関で、そなえじぃがオレンジ色の防災リュックを背負い、ひなたちゃんの入ったハードキャリーを持ち上げて出発しようとしている。玄関の扉は開き、外から明るい日差しが差し込む。土間にはフードを入れた予備のバッグが置かれ、壁にはリードと予備の首輪が掛かっている。
同行避難とは、この「出ていく動き」のこと。ここまでが行動で、続きは避難所の話になる。

同伴避難=避難所での「状態」。じつは4つある

さて、ここからが本題じゃ。同伴避難の定義はこうなっておる。

災害時に、避難所等で飼い主がペットを飼養管理すること(状態)。ただし、避難所等で飼い主とペットが同室で過ごすことを意味するものではなく、ペットの飼養環境は避難施設ごとに異なることに留意が必要である。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」

「同室で過ごすことを意味するものではない」——ここが最大のポイントじゃ。 そして現在、能登半島地震の教訓をふまえて進んでいる改訂の案では、 この同伴避難がさらに4つのタイプに整理された。ここは知っておくと本当に役に立つ。

① 同伴避難(同室飼養)

飼い主とペットが同じ部屋で過ごす。いちばん安心だが、動物が苦手な人やアレルギーのある避難者への配慮が必要なため、実現できる避難所は多くない

② 同伴避難(別室飼養)

人は居住スペース、ペットは別室のペット専用スペース。屋根の下で世話ができるので現実的な落としどころで、比較的よく採用される形じゃ

③ 同伴避難(屋外飼養)

校庭のテント、体育館の軒下、渡り廊下など屋外での飼養。真夏や真冬はここが厳しくなる。暑さ寒さの対策は飼い主の準備次第になる

④ 同伴避難(ペットのみ車中飼養)

ペットを車の中で飼養する形。夏場は車内が高温になるため、ガイドラインも「厳しい」と明記しており、飼い主が長時間離れる場合は別の場所へ移すよう求めておる

避難所のペット専用スペース。明るい窓のある板張りの部屋に、青いマットを敷いた上へワイヤーケージが数台きちんと並んでいる。手前のケージの中でひなたちゃんが使い慣れた毛布の上に落ち着いて座り、水の器が置かれている。そなえじぃがケージの前にしゃがみ、扉の枠に手を添えてやさしく話しかけている。
これは②の別室飼養。人の居住スペースとは別の部屋で、ケージに入って過ごす形じゃ。
そなえじぃ

大事なのは、この4つがぜんぶ「同伴避難できます」と案内されうるということじゃ。 同じ言葉なのに、中身は屋根の下と炎天下ほど違う。 じゃから「同伴避難できますか」ではなく、「どのタイプですか」と聞く。 これが、この記事でいちばん覚えて帰ってほしいことじゃな。

※この4分類は、能登半島地震を受けて進められているガイドライン改訂の案で整理されたものです。 2026年8月時点で環境省が公表している正式版は平成30年3月発行のもので、改訂版はまだ公表されていません。 お住まいの自治体の運用も、地域によって進み方に差があります。

能登半島地震で、実際に何が起きたか

「そうは言っても、実際はなんとかなるのでは」——そう思われるかもしれん。 環境省の資料には、令和6年能登半島地震のときの状況がこう記されておる。

発災直後に多くの避難者が避難所にペットと同行避難したが、避難所でのペット受入れに関する体制やルールが整っておらず、混乱が生じた事例が確認された。例えば、一部の避難所ではペットの受入れが拒まれたり、避難所内でのペットの飼養を巡って苦情が出されたりした。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案

「受入れが拒まれた」——国の資料に、はっきりそう書かれておる。 同行避難という言葉が広まった結果、多くの飼い主がペットを連れて避難所へ向かった。 ところが受け入れる側のルールが追いついていなかった。ここに落差が生まれたわけじゃ。

だからこの記事は、脅すために書いておるのではない。 その落差を、事前の電話1本で埋められる——それを伝えたくて書いておる。

今日、確認しておく3つのこと

問い合わせ先は、お住まいの市区町村の防災担当課、または動物愛護管理担当(保健所)じゃ。 ホームページの「避難所一覧」に書かれていることもある。聞くのはこの3つだけでよい。

  • 最寄りの避難所は、ペットを受け入れていますか
    市内すべての避難所が受け入れるとは限らん。受け入れる避難所が指定されていることも多いので、「自宅から一番近い受け入れ避難所はどこか」まで聞く
  • 飼養場所は、同室・別室・屋外・車中のどれになりますか
    ここが今日いちばん伝えたい質問じゃ。屋外だと分かれば、夏の暑さ対策や冬の保温具を備える理由がはっきりする
  • 持ち物とルールは決まっていますか
    ケージ必須、ワクチン証明の提示、頭数の制限——条件があるのが普通じゃ。ケージ必須と分かれば、今日買うべき物が決まる

離れて暮らす親のぶんも、同じ3つを親の住む自治体に聞いておくとよい。 親の家の情報をまとめておくなら、記入式の親の防災カルテ(無料)に書き足しておくと、家族で共有できるぞ。

「分散避難」という第3の道

もうひとつ、知っておいてほしい言葉がある。分散避難じゃ。ガイドラインではこう説明されておる。

「避難」とは、文字通り「難」を「避」けることであり、指定緊急避難場所等に行くことだけが避難ではなく、それ以外にも安全な親戚・知人宅やホテル・旅館等の避難先に立退き避難したり、自らの判断で屋内安全確保したりする等、様々な避難行動がある。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案

つまり、避難所へ行くことだけが避難ではない。 自宅が安全なら在宅避難(屋内安全確保)でよいし、親戚宅やペット可の宿へ移るのも立派な避難行動じゃ。 ペットと暮らす家にとっては、むしろこちらのほうが現実的なことも多い。

在宅避難

自宅の安全が確認できるなら、これがペットにはいちばんやさしい。ただし家具固定と備蓄が前提になる

親戚・知人宅

被災地の外に1軒、頼める先を決めておく。「そのときお願いします」を、平常時に言っておくのがコツじゃ

ペット可の宿泊施設

台風のように予測できる災害では特に有効。早めに動けば選択肢がある。名前と電話番号を控えておく

在宅避難を選べる家にしておく準備は、ペットの防災 5ステップのSTEP1とSTEP3がそのまま効いてくる。 備える物のほうは、猫の防災グッズ 本当に要るもの一覧にまとめてあるぞ。

ペットを連れずにできる、同行避難訓練

最後に、ガイドラインに書かれていてあまり知られていない、とても良い方法を紹介しておこう。 「訓練といっても、猫を連れ出すなんて無理」——そう思った方にこそ読んでほしい。

「ペット同行避難訓練」は、必ずしも生体を伴って実施する必要はない。室内飼養で外出の習慣がない猫などは、過重なストレスをかけて避難所に連れていくよりも、キャリーケースに猫の体重と同じ重さになるように、水を入れたペットボトルを入れて、自宅から避難所まで歩いてみることで、避難ルートや猫の重さに対する対策、その他の避難用品の搬送方法などを確認することを目的とし…… 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案

猫の代わりに、同じ重さの水を入れて歩く。これだけじゃ。 5kgの猫なら、2Lのペットボトル2本と500mLを1本。それをキャリーに入れて、避難所まで歩いてみる。 猫にはストレスをかけず、飼い主だけで確認できる。

分かること①:本当の所要時間

「歩いて10分」は手ぶらのときの10分じゃ。5kgを提げると倍かかることもある。夜だとさらに変わる

分かること②:本当の重さ

手で提げる型では途中で持ち替えたくなる。「リュック型に買い替えよう」と本気で思えるのは、実際に持ってみた人だけじゃ

分かること③:道の危なさ

ブロック塀、狭い歩道、階段、冠水しそうな低い道。荷物を持って歩くと、危ない場所が急に目に入るようになる

夕暮れの住宅街の歩道を、そなえじぃがハードキャリーを持って歩いている。キャリーの中には猫ではなく、水の入ったペットボトルが3本立てて入っている。重さに少し驚いたような表情。左手前の家の窓辺からは、ひなたちゃんが中で寝そべったまま、のんびりと見送っている。
猫の代わりに、同じ重さの水を入れて歩く。猫にストレスをかけずに、道と時間と重さが分かる。
そなえじぃ

涼しい日の夕方でよい。1回でよい。この散歩ひとつで、 避難所の場所・道の危険・キャリーの向き不向き・自分の体力が、まとめて分かる。 防災でこれほど費用対効果の高い30分は、そうそう無いぞ。

よくある質問

Q. 同行避難と同伴避難、どう違う?

A. 同行避難は「ペットを連れて安全な場所まで避難する避難行動」、同伴避難は「避難所等で飼い主がペットを飼養管理する状態」じゃ。前者は動き、後者は状況。環境省のガイドラインでもはっきり別の用語として定義されておる。「一緒に逃げられる」と「一緒に過ごせる」は別の話、と覚えておくとよい。

Q. 同伴避難なら同じ部屋で過ごせる?

A. とは限らんのじゃ。ガイドラインは「同室で過ごすことを意味するものではない」と明記しておる。改訂案では同伴避難が同室飼養・別室飼養・屋外飼養・ペットのみ車中飼養の4つに整理された。同じ「同伴避難できます」でも中身が全然違うでな、自治体には「どのタイプですか」と聞くのがよいぞ。

Q. 避難所が受け入れてくれなかったら?

A. 避難先は避難所だけではない。ガイドラインには「分散避難」という考え方があってな、安全な親戚・知人宅、ペット可の宿、自宅が安全なら在宅避難——これらも立派な避難行動じゃ。大事なのは、当日断られて困るのではなく、事前に条件を聞いて、第2・第3の行き先を決めておくことじゃな。

Q. 避難訓練はペットを連れて行かないとだめ?

A. その必要はないんじゃ。ガイドラインにも「必ずしも生体を伴って実施する必要はない」と書かれておる。猫なら、キャリーに猫と同じ重さになるよう水を入れたペットボトルを入れて、避難所まで歩いてみる。これで道も時間も重さも確認できる。猫にストレスをかけずに済む、よくできた方法じゃよ。

  • 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年3月発行)
  • 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」の改訂等に係る検討会 資料(令和7年10月〜令和8年3月)

本記事は2026年8月時点の情報にもとづいています。改訂版ガイドラインの公表後、内容を更新します。 避難所の受け入れ条件は自治体・避難所ごとに異なるため、必ずお住まいの自治体にご確認ください。