ペットの防災、まず何から?犬・猫と暮らす家が今日からできる、5つのステップ
「うちの子の防災、しなきゃとは思ってるんだけど……」——そう言ったまま、何年も経ってしまう。 これはサボっているのではなく、やることが多すぎて、どこから手をつければいいか分からないのが原因じゃ。 だからこの記事では、あれもこれもと並べるのはやめて、順番にした。 上から順にひとつずつ。1日目は5分で終わるものからでええ。ひなたと一緒に、ゆっくり進もうかの。
図解: ペットの防災 5つのステップ
まずは全体像から。この1枚に、これから話すことがぜんぶ入っておる。 印刷して冷蔵庫やケージのそばに貼っておくと、家族みんなで同じものを見られてよいぞ。
なぜ「順番」が大事なのか
ペット防災の情報を調べると、「あれも要る、これも要る」と大量のリストが出てくる。 じゃが、それを全部そろえようとすると、たいてい途中で止まってしまう。
もうひとつ、見落とされがちな事実がある。 ペットが命を落とす原因の多くは、災害そのものではなく「そのあと」に起きることじゃ。 家具の下敷きになる、驚いて外へ飛び出して行方不明になる、飼い主が家に戻れずフードが尽きる——。 これらは、備え方の順番を間違えなければ、かなりの部分を防げる。
買い物から始めると、たいてい途中で止まる。お金のかからないSTEP1・STEP2からじゃ。 この2つは、今日中に終わらせることもできるぞ。
STEP1 まず人の安全と、家の中の安全
意外に思うかもしれんが、ペットを守る一番確実な方法は、飼い主が無事でいることじゃ。 あなたがけがをすれば、その子にごはんをあげる人がいなくなる。だから最初は「人と家」から。
倒れた家具は、人にとってもペットにとっても凶器になる。特にケージや寝床のまわり、いつも通る動線から先に手をつける。全部やらなくていい、大きいものからで十分じゃ
背の高い家具のそば、大きな窓のそば、テレビの前は避ける。ガラスが飛んでくる場所・物が落ちてくる場所にないか、しゃがんで子どもの目線で見てみるとよく分かる
猫も犬も、大きな音や揺れでパニックになって逃げる。玄関や窓の脱走防止柵、揺れで扉が開かない食器棚のストッパー。逃がさないことが、最大の迷子対策じゃ
怖がった猫は、ふだんの隠れ場所に潜り込む。ソファの下か、押し入れの奥か。「いつもここに隠れる」を家族で共有しておくと、避難のときに探す時間が短くなる
家具固定のやり方は、地震が起きた直後の30分でやることとあわせて読むと、 「揺れる前」と「揺れた後」がつながって理解しやすいぞ。
STEP2 身元表示を二重にする
災害でペットとはぐれてしまったとき、再会できるかどうかを分けるのが身元表示じゃ。 そして大事なのは、1つではなく2つ用意すること。理由は簡単で、どちらにも弱点があるからじゃ。
保護してくれた人がその場で連絡できるのが強み。名前と携帯番号を入れる。弱点は、外れたり引っかかって取れたりすること。猫は安全のため、力が加わると外れるセーフティ首輪が使われるので、なおさら外れやすい
直径2mmほどの電子標識を皮下に入れるもの。外れない・消えないのが強み。弱点は専用リーダーがないと読めないこと。2022年6月から、販売される犬猫への装着は義務、すでに飼っている方は努力義務じゃ
マイクロチップで一番多い失敗が、登録した電話番号や住所が古いままというやつじゃ。 引っ越した、携帯を変えた——それだけで連絡がつかなくなる。 今日、環境省の登録サイトで自分の登録内容を1回見てみてくれ。5分で済むぞ。
それともうひとつ、お金も手間もかからないのに効くのが「一緒に写った写真」じゃ。 迷子のポスターや届け出に使えるし、「この子は自分の飼い犬・飼い猫だ」と示す証明にもなる。 全身・顔・特徴のある柄の3枚を、スマホと、印刷して持ち出し袋に。
STEP3 フードと水を最低5日分
ここでやっと買い物の話じゃ。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」では、 ペットのフードと水は少なくとも5日分、できれば7日分以上が目安とされておる。
「人の備蓄は3日分と聞いたのに、なぜペットは長いの?」——理由がある。 支援物資は人の食料から先に届く。ペットフードは後回しになりやすく、 しかもその子が食べ慣れた種類が届く保証はまったくない。 お腹の弱い子や療法食の子は、急に別のフードに変えられない。だから自前で長めに持つ必要があるんじゃ。
体重1kgあたり1日40〜60mLが一般的な目安。体重5kgの猫なら1日200〜300mL、7日分で約1.5〜2L。ドライフードをふやかす分も忘れずに足しておく
持病がある子は、フードも薬も切らした瞬間に体調が崩れる。かかりつけの動物病院に「災害時に備えて少し多めに」と相談しておくと安心。処方内容のメモか薬の袋の写真も残しておく
保存用に買い込むと、たいてい期限を切らす。いつものフードを1袋多く買い、古いほうから開ける。減ったら買い足すだけ。これなら食べ慣れた味がいつも家にある
見落としやすいのがここ。猫砂・ペットシーツは避難生活でいちばん困る物資のひとつ。フードと同じ日数分をセットで考える
回し方のコツは、人の備蓄とまったく同じじゃ。ローリングストックとは?続けやすい備蓄の始め方で、 仕組みだけつかんでおけば、ペットの分にもそのまま使えるぞ。
STEP4 キャリー・ケージに慣れさせる
ここが、じつはお金では買えない、いちばん時間のかかる備えじゃ。 避難所では、ペットはケージやキャリーの中で過ごすのが基本になる。 そのとき「入るのを全力で拒否する」子だと、避難そのものができん。
病院に行くときだけキャリーを出す家では、猫はキャリーを見ただけで逃げるようになる。 キャリーは「怖い場所」ではなく「安心できる自分の部屋」——そう覚えてもらうのがゴールじゃ。
まずは扉を外すか開けたまま、部屋の隅に置いておく。存在が日常になるだけで、警戒心はぐっと下がる。上にタオルを掛けて薄暗くすると、猫は特に入りやすい
おやつを奥に置く、ごはんを中で出す、お気に入りの毛布を敷く。入ったら褒める。無理に押し込むのは逆効果で、一度嫌な記憶がつくとやり直しに時間がかかる
入っている間に10秒だけ閉めて、開けて褒める。慣れたら1分、5分と伸ばす。持ち上げて家の中を一周できるようになれば十分じゃ
避難所には知らない人や他の動物がいる。犬なら無駄吠えをさせない、ハウスの指示で落ち着ける、この2つがあるだけで周囲との摩擦が激減する
猫の飼い主さんに、ひとつだけ裏技を。洗濯ネットを1枚、持ち出し袋に入れておくとええ。 パニックになった猫をネットに入れてからキャリーに移すと、爪も出せず、脱走もしにくい。 動物病院でもよく使われる方法じゃ。100円で命を守れる備えじゃな。
STEP5 避難先と経路を決めておく
最後に、いちばん誤解の多いところを整理しておこう。「同行避難」と「同伴避難」は別物じゃ。
ペットを連れて安全な場所まで移動する行動を指す。国が推奨しているのはこちら。ただし避難所の中で一緒に過ごせることは意味しない——ここが最大の勘違いポイントじゃ
避難所で同じ空間にいられる状態。受け入れ体制は自治体・避難所ごとにまったく違う。多くは人とペットで部屋を分ける「住み分け」が基本で、屋外テントや別室になることも多い
つまり、行ってから確かめるのでは遅い。今のうちに、この3つを調べておくんじゃ。
- 最寄りの避難所はペットを受け入れているか。自治体の防災担当課かホームページで確認。「ペット同行可」と書かれていても、条件(ケージ必須・屋外のみ等)があることが多い
- そこまでの経路を、実際にキャリーを持って歩いてみる。7kgの猫+キャリーは想像よりずっと重い。何分かかるか、途中に段差や川はないか、体で確かめておく
- 第2の避難先を用意する。避難所がだめでも、在宅避難・車中避難・親戚宅・ペットホテル・知人宅。逃げ道が複数あると、判断が早くなる
自宅が安全なら、無理に避難所へ行かず家にとどまる(在宅避難)ほうがペットにはやさしいことも多い。 そのためにこそ、STEP1の家の中の安全と、STEP3の備蓄が効いてくるわけじゃ。 避難のタイミングそのものについては、警戒レベル3で動く約束の考え方が、そのまま使えるぞ。
ペット用 持ち出し袋の中身
5つのステップを踏まえて、ひとつの袋にまとめておくもの。 人の持ち出し袋とは別の袋にして、玄関やキャリーのそばに置いておくのがコツじゃ。
フード(5〜7日分)/飲み水/常備薬・療法食/キャリーまたはケージ/リード・ハーネス(予備も1本)
ペットシーツ/猫砂と簡易トイレ/ビニール袋(多め)/ウェットティッシュ/タオル/食器・折りたたみの水入れ
ワクチン接種証明のコピー/かかりつけ病院の連絡先/一緒に写った写真/使い慣れた毛布やおもちゃ/洗濯ネット(猫)
全部を一度にそろえなくてよい。優先度Aだけ入った袋が玄関にある——それだけで、備えていない状態とは天と地の差がある。 人の分の持ち出し袋がまだの方は、非常持ち出し袋リストも参考にどうぞ。 印刷して使える無料チェックリスト(PDF)もあるので、そちらに書き足していくのが早いぞ。
よくある質問
Q. ペットの防災、まず何から始めればいい?
A. 順番があるんじゃ。①人と家の中の安全(家具固定・ケージの置き場所)②迷子札とマイクロチップで身元表示を二重に ③フードと水を最低5日分 ④キャリーに慣れさせる ⑤避難先と経路を決める——この5つ。①と②はお金がかからんから、今日中にでも取りかかれるぞ。
Q. フードと水は何日分いる?
A. 環境省のガイドラインでは、少なくとも5日分、できれば7日分以上が目安じゃ。人の食料より長いのは、支援物資のペットフードが届くのに時間がかかり、しかも食べ慣れた種類が届くとは限らんからじゃな。療法食や薬が要る子は、さらに多めに。
Q. 同行避難すれば避難所で一緒に過ごせる?
A. いいえ、そこが誤解の多いところじゃ。「同行避難」は一緒に安全な場所まで逃げる行動のこと。避難所の中で同じ部屋にいられるかは別の話で、人とペットで場所を分ける「住み分け」が基本になることが多い。受け入れ方は自治体によってまるで違うから、事前に確認しておいてくれ。
Q. ペットを家に残して避難してもいい?
A. 原則は一緒に逃げる「同行避難」じゃ。置いていくと、餌や水が尽きる、家の倒壊や浸水で逃げ場を失う、外に出て行方不明になる——といったことが起きる。あとから迎えに戻ろうとして、飼い主さん自身が危ない目にあった例もある。日ごろのキャリー慣らしと、玄関の持ち出し袋。この2つで「一緒に動ける家」にしておこう。