コラム — ペットの防災 公開: 2026/08/15

ペットの防災、まず何から?犬・猫と暮らす家が今日からできる、5つのステップ

「うちの子の防災、しなきゃとは思ってるんだけど……」——そう言ったまま、何年も経ってしまう。 これはサボっているのではなく、やることが多すぎて、どこから手をつければいいか分からないのが原因じゃ。 だからこの記事では、あれもこれもと並べるのはやめて、順番にした。 上から順にひとつずつ。1日目は5分で終わるものからでええ。ひなたと一緒に、ゆっくり進もうかの。

図解: ペットの防災 5つのステップ

まずは全体像から。この1枚に、これから話すことがぜんぶ入っておる。 印刷して冷蔵庫やケージのそばに貼っておくと、家族みんなで同じものを見られてよいぞ。

ペットの防災5つのステップの図解。STEP1 まず人の安全と家の中の安全:家具の固定とケージの置き場所を落ちてこない・倒れてこない場所に。STEP2 身元表示を二重にする:首輪と迷子札、マイクロチップ、登録情報の更新確認。STEP3 フード・水を最低5日分:環境省の目安は少なくとも5日分、できれば7日分以上。療法食や薬がある子は多めに。STEP4 キャリー・ケージに慣れさせる:避難所ではケージで過ごすのが基本。ふだんから安心できる場所にしておく。STEP5 避難先と経路を決めておく:同行避難できるか自治体に確認し、預け先など第2の避難先も考える。ペット用持ち出し袋に入れるもの:フード・水5〜7日分、食器・水入れ、常備薬・療法食、キャリー/ケージ、リード・ハーネス、ペットシーツ・トイレ用品、ビニール袋・タオル、ワクチン証明・写真、洗濯ネット(猫)

なぜ「順番」が大事なのか

ペット防災の情報を調べると、「あれも要る、これも要る」と大量のリストが出てくる。 じゃが、それを全部そろえようとすると、たいてい途中で止まってしまう。

もうひとつ、見落とされがちな事実がある。 ペットが命を落とす原因の多くは、災害そのものではなく「そのあと」に起きることじゃ。 家具の下敷きになる、驚いて外へ飛び出して行方不明になる、飼い主が家に戻れずフードが尽きる——。 これらは、備え方の順番を間違えなければ、かなりの部分を防げる。

そなえじぃ

買い物から始めると、たいてい途中で止まる。お金のかからないSTEP1・STEP2からじゃ。 この2つは、今日中に終わらせることもできるぞ。

STEP1 まず人の安全と、家の中の安全

意外に思うかもしれんが、ペットを守る一番確実な方法は、飼い主が無事でいることじゃ。 あなたがけがをすれば、その子にごはんをあげる人がいなくなる。だから最初は「人と家」から。

家具を固定する

倒れた家具は、人にとってもペットにとっても凶器になる。特にケージや寝床のまわり、いつも通る動線から先に手をつける。全部やらなくていい、大きいものからで十分じゃ

ケージ・寝床の置き場所を見直す

背の高い家具のそば、大きな窓のそば、テレビの前は避ける。ガラスが飛んでくる場所・物が落ちてくる場所にないか、しゃがんで子どもの目線で見てみるとよく分かる

飛び出し対策をする

猫も犬も、大きな音や揺れでパニックになって逃げる。玄関や窓の脱走防止柵、揺れで扉が開かない食器棚のストッパー。逃がさないことが、最大の迷子対策じゃ

隠れ場所を把握しておく

怖がった猫は、ふだんの隠れ場所に潜り込む。ソファの下か、押し入れの奥か。「いつもここに隠れる」を家族で共有しておくと、避難のときに探す時間が短くなる

そなえじぃが壁に金具で固定された背の高い木製の棚を指さしている。棚の上段には何も置かず、下段にかごと観葉植物だけ。棚から離れた床の上で、ひなたちゃんが丸いペットベッドで安心して眠っている。ペットの寝床の上に落ちてくる物がない状態を示している。
棚は上を固定し、重い物は置かない。そして寝床は「落ちてくる物の下」から外す。

家具固定のやり方は、地震が起きた直後の30分でやることとあわせて読むと、 「揺れる前」と「揺れた後」がつながって理解しやすいぞ。

STEP2 身元表示を二重にする

災害でペットとはぐれてしまったとき、再会できるかどうかを分けるのが身元表示じゃ。 そして大事なのは、1つではなく2つ用意すること。理由は簡単で、どちらにも弱点があるからじゃ。

① 首輪+迷子札(見てすぐ分かる)

保護してくれた人がその場で連絡できるのが強み。名前と携帯番号を入れる。弱点は、外れたり引っかかって取れたりすること。猫は安全のため、力が加わると外れるセーフティ首輪が使われるので、なおさら外れやすい

② マイクロチップ(絶対に外れない)

直径2mmほどの電子標識を皮下に入れるもの。外れない・消えないのが強み。弱点は専用リーダーがないと読めないこと。2022年6月から、販売される犬猫への装着は義務、すでに飼っている方は努力義務じゃ

そなえじぃ

マイクロチップで一番多い失敗が、登録した電話番号や住所が古いままというやつじゃ。 引っ越した、携帯を変えた——それだけで連絡がつかなくなる。 今日、環境省の登録サイトで自分の登録内容を1回見てみてくれ。5分で済むぞ。

それともうひとつ、お金も手間もかからないのに効くのが「一緒に写った写真」じゃ。 迷子のポスターや届け出に使えるし、「この子は自分の飼い犬・飼い猫だ」と示す証明にもなる。 全身・顔・特徴のある柄の3枚を、スマホと、印刷して持ち出し袋に。

STEP3 フードと水を最低5日分

ここでやっと買い物の話じゃ。環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」では、 ペットのフードと水は少なくとも5日分、できれば7日分以上が目安とされておる。

「人の備蓄は3日分と聞いたのに、なぜペットは長いの?」——理由がある。 支援物資は人の食料から先に届く。ペットフードは後回しになりやすく、 しかもその子が食べ慣れた種類が届く保証はまったくない。 お腹の弱い子や療法食の子は、急に別のフードに変えられない。だから自前で長めに持つ必要があるんじゃ。

水の量の目安

体重1kgあたり1日40〜60mLが一般的な目安。体重5kgの猫なら1日200〜300mL、7日分で約1.5〜2L。ドライフードをふやかす分も忘れずに足しておく

薬・療法食は多めに

持病がある子は、フードも薬も切らした瞬間に体調が崩れる。かかりつけの動物病院に「災害時に備えて少し多めに」と相談しておくと安心。処方内容のメモか薬の袋の写真も残しておく

ローリングストックで回す

保存用に買い込むと、たいてい期限を切らす。いつものフードを1袋多く買い、古いほうから開ける。減ったら買い足すだけ。これなら食べ慣れた味がいつも家にある

トイレ用品も同じ日数分

見落としやすいのがここ。猫砂・ペットシーツは避難生活でいちばん困る物資のひとつ。フードと同じ日数分をセットで考える

そなえじぃが低い木製の戸棚の前にしゃがみ、ドライフードの袋を持ち上げて説明している。棚にはフードの袋が数個、ペットボトルの水が2本、ウェットフードの缶詰、たたんだペットシーツが整然と並んでいる。足元でひなたちゃんが前足を上げて見上げている。
買い込むのではなく、いつものフードを1袋多く。棚を見て日数が数えられる状態が目標じゃ。

回し方のコツは、人の備蓄とまったく同じじゃ。ローリングストックとは?続けやすい備蓄の始め方で、 仕組みだけつかんでおけば、ペットの分にもそのまま使えるぞ。

STEP4 キャリー・ケージに慣れさせる

ここが、じつはお金では買えない、いちばん時間のかかる備えじゃ。 避難所では、ペットはケージやキャリーの中で過ごすのが基本になる。 そのとき「入るのを全力で拒否する」子だと、避難そのものができん。

病院に行くときだけキャリーを出す家では、猫はキャリーを見ただけで逃げるようになる。 キャリーは「怖い場所」ではなく「安心できる自分の部屋」——そう覚えてもらうのがゴールじゃ。

① 出しっぱなしにする

まずは扉を外すか開けたまま、部屋の隅に置いておく。存在が日常になるだけで、警戒心はぐっと下がる。上にタオルを掛けて薄暗くすると、猫は特に入りやすい

② 中でいいことが起きるようにする

おやつを奥に置く、ごはんを中で出す、お気に入りの毛布を敷く。入ったら褒める。無理に押し込むのは逆効果で、一度嫌な記憶がつくとやり直しに時間がかかる

③ 扉を閉める練習を短時間から

入っている間に10秒だけ閉めて、開けて褒める。慣れたら1分、5分と伸ばす。持ち上げて家の中を一周できるようになれば十分じゃ

④ ケージで静かに過ごせる練習

避難所には知らない人や他の動物がいる。犬なら無駄吠えをさせない、ハウスの指示で落ち着ける、この2つがあるだけで周囲との摩擦が激減する

扉を外したハードタイプのペットキャリーが日の当たる床に置かれ、中にやわらかい毛布が敷かれている。ひなたちゃんが自分から中に入ってくつろぎ、前足を入口から出している。少し離れたところにそなえじぃがあぐらをかいて座り、手を伸ばさずにやさしく見守っている。
扉を外して出しっぱなし。手は出さず、入ったら褒める。これだけで「安心できる場所」に変わる。
そなえじぃ

猫の飼い主さんに、ひとつだけ裏技を。洗濯ネットを1枚、持ち出し袋に入れておくとええ。 パニックになった猫をネットに入れてからキャリーに移すと、爪も出せず、脱走もしにくい。 動物病院でもよく使われる方法じゃ。100円で命を守れる備えじゃな。

STEP5 避難先と経路を決めておく

最後に、いちばん誤解の多いところを整理しておこう。「同行避難」と「同伴避難」は別物じゃ。

同行避難=一緒に「逃げる」こと

ペットを連れて安全な場所まで移動する行動を指す。国が推奨しているのはこちら。ただし避難所の中で一緒に過ごせることは意味しない——ここが最大の勘違いポイントじゃ

同伴避難=一緒に「過ごす」こと

避難所で同じ空間にいられる状態。受け入れ体制は自治体・避難所ごとにまったく違う。多くは人とペットで部屋を分ける「住み分け」が基本で、屋外テントや別室になることも多い

つまり、行ってから確かめるのでは遅い。今のうちに、この3つを調べておくんじゃ。

  • 最寄りの避難所はペットを受け入れているか。自治体の防災担当課かホームページで確認。「ペット同行可」と書かれていても、条件(ケージ必須・屋外のみ等)があることが多い
  • そこまでの経路を、実際にキャリーを持って歩いてみる。7kgの猫+キャリーは想像よりずっと重い。何分かかるか、途中に段差や川はないか、体で確かめておく
  • 第2の避難先を用意する。避難所がだめでも、在宅避難・車中避難・親戚宅・ペットホテル・知人宅。逃げ道が複数あると、判断が早くなる

自宅が安全なら、無理に避難所へ行かず家にとどまる(在宅避難)ほうがペットにはやさしいことも多い。 そのためにこそ、STEP1の家の中の安全と、STEP3の備蓄が効いてくるわけじゃ。 避難のタイミングそのものについては、警戒レベル3で動く約束の考え方が、そのまま使えるぞ。

ペット用 持ち出し袋の中身

5つのステップを踏まえて、ひとつの袋にまとめておくもの。 人の持ち出し袋とは別の袋にして、玄関やキャリーのそばに置いておくのがコツじゃ。

優先度A:命に直結するもの

フード(5〜7日分)/飲み水/常備薬・療法食/キャリーまたはケージ/リード・ハーネス(予備も1本)

優先度B:衛生と周囲への配慮

ペットシーツ/猫砂と簡易トイレ/ビニール袋(多め)/ウェットティッシュ/タオル/食器・折りたたみの水入れ

優先度C:情報と安心

ワクチン接種証明のコピー/かかりつけ病院の連絡先/一緒に写った写真/使い慣れた毛布やおもちゃ/洗濯ネット(猫)

全部を一度にそろえなくてよい。優先度Aだけ入った袋が玄関にある——それだけで、備えていない状態とは天と地の差がある。 人の分の持ち出し袋がまだの方は、非常持ち出し袋リストも参考にどうぞ。 印刷して使える無料チェックリスト(PDF)もあるので、そちらに書き足していくのが早いぞ。

よくある質問

Q. ペットの防災、まず何から始めればいい?

A. 順番があるんじゃ。①人と家の中の安全(家具固定・ケージの置き場所)②迷子札とマイクロチップで身元表示を二重に ③フードと水を最低5日分 ④キャリーに慣れさせる ⑤避難先と経路を決める——この5つ。①と②はお金がかからんから、今日中にでも取りかかれるぞ。

Q. フードと水は何日分いる?

A. 環境省のガイドラインでは、少なくとも5日分、できれば7日分以上が目安じゃ。人の食料より長いのは、支援物資のペットフードが届くのに時間がかかり、しかも食べ慣れた種類が届くとは限らんからじゃな。療法食や薬が要る子は、さらに多めに。

Q. 同行避難すれば避難所で一緒に過ごせる?

A. いいえ、そこが誤解の多いところじゃ。「同行避難」は一緒に安全な場所まで逃げる行動のこと。避難所の中で同じ部屋にいられるかは別の話で、人とペットで場所を分ける「住み分け」が基本になることが多い。受け入れ方は自治体によってまるで違うから、事前に確認しておいてくれ。

Q. ペットを家に残して避難してもいい?

A. 原則は一緒に逃げる「同行避難」じゃ。置いていくと、餌や水が尽きる、家の倒壊や浸水で逃げ場を失う、外に出て行方不明になる——といったことが起きる。あとから迎えに戻ろうとして、飼い主さん自身が危ない目にあった例もある。日ごろのキャリー慣らしと、玄関の持ち出し袋。この2つで「一緒に動ける家」にしておこう。