コラム — ペットの防災 公開: 2026/10/25

親が飼っている犬猫の防災離れて暮らす子どもが、電話で決めておける5つのこと

実家の親が、犬や猫と暮らしておる。電話の向こうで「この子がおるから寂しくない」と笑う。 ありがたい話じゃ。じゃがな、災害のとき、親はペットを置いて逃げられん。 置いていけんから、逃げるのが遅れる。あるいは、逃げずに家に残ってしまう。 つまり親のペットの備えは、そのまま親の命の備えなんじゃ。 この記事では、離れて暮らす子どもが次の電話で決めておける5つのことを、順番に書いていくぞ。

図解: 電話で決める5つ

結論を1枚にまとめた。次の電話で、上から順に聞いていけばよいようにしてある。 スマホに保存しておいて、親と話しながら見てくれ。

親が飼っている犬猫の防災で、離れて暮らす家族が電話で決める5つの図解。1 逃げ方:避難所の受け入れと運ぶ手段。2 フード・水・薬は少なくとも5日分。3 預け先は複数。4 親の留守中に誰が見に行くか。5 ペットの写真と情報を子どもも持つ。

結論:決めるのは「逃げ方・量・預け先・留守・情報」

先に答えを書いておく。離れて暮らす家族が決めておくことは、この5つだけじゃ。 全部をいっぺんに決めんでもよい。1回の電話で1つずつ、5回の電話で終わる量にしてある。

逃げ方を決める

どこへ、どうやって運ぶか。避難所がペットを受け入れるかと、運ぶ手段の2つを確かめる

フード・水・薬の量を決める

環境省の目安は少なくとも5日分、できれば7日分以上。子どもが1袋多く送れば届く量じゃ

預け先を複数決める

近所、動物病院、遠くの家族。同じ町の人だけにしないのがコツじゃ

親の留守中を決める

買い物や通院の最中に地震が来たら、誰が家に見に行くか。合鍵の持ち主を決める

情報を子どもも持つ

ペットの写真、持病、薬、病院。親のスマホが壊れても困らないように、子どもの手元にも置く

順番にも意味がある。1と2は災害の当日に要ること、3と4は当日から数日のあいだに要ること、5ははぐれたときや、長引いたときに要ることじゃ。 つまり上から順に決めていけば、困る時間の早いものから片づいていく。 電話の話題に困ったら、この表の次の番号を聞けばよい。それくらいの気持ちでええんじゃ。

そしてどれも、お金はほとんどかからん。かかるのは、親と話す時間と、フード1袋ぶんくらいのものじゃ。 備えというと「何を買うか」を考えがちじゃが、親とペットの防災で大事なのは、誰が・いつ・何をするかを決めておくことのほうでな。 物は、決めたことに合わせてあとから足していけばよい。

なぜ「親のペット」は家族の問題なのか

まず、国がどう書いておるかを見てみよう。環境省が飼い主向けにまとめた冊子の最初のほうに、こうある。

災害でペットを守ることができるのは飼い主だけです。自分が無事でないとペットは守れません。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」

「自分が無事でないと」という一文は、高齢の親にはとりわけ重い。 足腰が弱くなった親が、怖がって暴れる猫をキャリーに入れ、犬のリードを握り、自分の薬と眼鏡も持って、暗い道を歩く。 若い人でも大変なことを、一人で全部やるのは、正直むずかしい。

そしてもうひとつ。ガイドラインは、ペットの世話は飼い主の「自助」が原則じゃと書いておる。

飼い主には、まずは自分の安全を確保し、そのうえで、ペットの安全と健康を守り、他者に迷惑をかけることなく、ペットを適正に飼養管理する責務があります。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」

役所の人がペットを迎えに来てくれるわけではない、ということじゃ。災害の直後は、人の支援で手いっぱいになる。 ペットフードが避難所に届くのは、ずっと後になることが多い。

じゃから、離れて暮らす子どもが「家族の自助」として一緒に考える。 親ひとりの自助では足りん分を、家族で埋めておくんじゃ。遠くにいても、できることは思っている以上に多いぞ。

そなえじぃが木の椅子に座り、電話の子機を耳に当ててうなずきながら、棚に置いたペットフードの袋を指さしている。足もとでひなたちゃんが見上げ、近くのクッションでは小型の犬が丸くなっている。
ペットの話から入ると、親も防災の話に耳を貸しやすいんじゃ。
そなえじぃ

親に「防災しとるか」と聞くと、たいてい「大丈夫じゃ」で終わる。わしもそうじゃった。 じゃが「この子のごはん、何日分ある?」と聞かれたら、ちゃんと数えて答える。 ペットは、親子で防災の話をするためのいちばんの入り口なんじゃよ。

決めること1・2:逃げ方と、フード・水・薬の量

1. 逃げ方:「どこへ」と「どうやって」

最初は「この子を連れて、どこへ、どうやって行くか」じゃ。 ここで、ひとつ言葉の誤解を解いておく。ペットと一緒に避難所へ行くことを「同行避難」と言うが、これは一緒に逃げる行動のことでな。

同行避難とは、避難行動を示す言葉であり、避難所でペットを人と同室で飼養管理することを意味するものではありません。 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」

さらに、環境省が検討しておるガイドラインの改訂案では、避難所での過ごし方を「同室」「別室」「屋外」「ペットのみ車中」の4つに分けて整理しておる。 つまり、着いてみたらペットは別の部屋、ということは普通にあるわけじゃ。 それを知らずに着いて「それなら家に戻る」と引き返してしまう。これがいちばん避けたい流れでな。 前もって知っておけば、親も「そういうものか」と受け止められる。

  • 近くの避難所はペットを受け入れるか:親の住む市区町村のホームページか、役所の窓口で確かめる。子どもがネットで調べて、電話で伝えてもよい
  • どうやって運ぶか:歩いて行ける距離か、車がいるか。犬が大きければ、近所の誰の車に乗せてもらうかまで決めておく
  • 家に残るという選択:家が安全な場所にあって壊れていなければ、在宅避難もある。その場合は、次の「量」がすべてになる

同行避難と同伴避難の違いは同行避難と同伴避難はどう違う?にくわしく書いた。 親が「わしは逃げん」と言い出したときの話し方は、高齢の親が避難を嫌がる理由と、けんかにならない伝え方を読んでおいてくれんか。

2. フード・水・薬の量:「少なくとも5日分」

ガイドラインは、ペット用の備蓄の優先順位のいちばん上に、こう挙げておる。

療法食、薬/ペットフード、水(少なくとも5日分[できれば 7 日分以上]) 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」

5日分は「最低限」と覚えておいてくれ。人の支援物資は早めに届いても、ペットのものは後回しになりやすい。 そして高齢の親は、重いフードの袋や水の箱を買い置きするのが難しい。ここは子どもの出番じゃ。

フードは子どもが送る

親に備蓄を数えてもらうより、いつものフードを1袋多く送るほうが早い。新しい袋は奥に、古い袋から食べてもらう。ペット版のローリングストックじゃ

薬と療法食は早めに相談

持病のある老犬・老猫は、薬が切れると命にかかわる。次の通院で「災害用に少し多めにもらえるか」を獣医師に相談するよう、親に伝えておく

水は人とは別に数える

人の水を分けるつもりでいると、すぐ足りなくなる。ペットの分は別に確保しておく。飲む量は体の大きさで違うから、ふだんの量を一度見ておくとよい

猫の持ち物の全体は猫の防災グッズ、本当に要るもの一覧に優先順位つきでまとめてある。 送る物を選ぶときの参考にしてくれ。

和室の低い机で、白い靴下のそなえじぃが白紙の地図に指で道をたどっている。そばには扉の開いたキャリーとたたんだリードがあり、ひなたちゃんが地図をのぞきこんでいる。
どこへ、どうやって逃げるか。紙に書くと、親もイメージしやすいぞ。

決めること3・4:預け先と、親の留守中

3. 預け先は「複数」

避難所に連れて行けない。親がけがをして入院した。家が傷んで住めなくなった。 そんなとき、ペットを誰に頼むかじゃ。ガイドラインはこう書いておる。

指定避難所などでの飼養以外にも、親戚や友人など、複数の一時預け先を探しておくことが望ましい 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」

「複数」がミソでな。同じ町内の知り合いは、同じ災害にあっておる。頼もうと思った相手も、自分の家のことで手いっぱいかもしれん。 じゃから、距離の違う3つを考えておくと安心じゃ。

1番目:近所の人

すぐに動ける人。お隣さんや散歩仲間。「いざというときは頼むよ」と一言かけておくだけでも違う

2番目:動物病院・ペットホテル

かかりつけの病院やペットホテルで、預かりの条件・期間・費用を平時に聞いておく。後で揉めないためにも大事じゃ

3番目:遠くの家族

ガイドラインは「被害がおよぶ可能性が低い遠方の知人」に預けることも挙げておる。子どもの家が、いちばん確かな預け先になることも多い

子どもの家で預かるつもりなら、平時に一度、1泊だけの「お泊まり練習」をしておくとよい。 知らない家、知らない匂いに一度でも慣れておくと、本番で犬も猫もずいぶん落ち着くぞ。 子どもの家に先住のペットがいるなら、相性も見ておける。

4. 親の留守中:「ペットだけが家にいたら」

ここは、ほとんどの家で抜けておる。親が買い物や通院で出ているあいだに地震が来たら、ペットは家に一匹きりじゃ。 道が通れなくなって、親が家に戻れないこともある。 ガイドラインも、家族で話し合っておくことの中に、こう入れておる。

留守中の対処方法と協力体制(ペットだけが自宅にいた場合にどうするか) 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」
  • 合鍵を誰が持つか:近所の人か、近くに住むきょうだいか。いまは誰も持っていない、という家も多いはずじゃ
  • 親と連絡がつかないとき、子どもは誰に電話するか:見に行ってくれる人の番号を、子どもも控えておく
  • 見に行った人がすること:キャリーの置き場所、フードの場所、ペットの隠れ場所を、その人にも伝えておく

災害のあとの連絡の決めごとは、離れて暮らす親との安否確認、家族で決める3つのルールと一緒に決めてしまうと早い。 「親と連絡がつかないとき、誰が動くか」は、ペットのことと人のことで、たいてい同じ人になるからの。

明るい玄関で、そなえじぃがしゃがんでリードをつけた小型の犬をなでている。段の上ではひなたちゃんが扉の開いたキャリーの中に落ち着いて座っている。床には開けたばかりの段ボール箱があり、ペットフードの袋が見えている。
届いたフードと、決まった預け先。それだけで親の顔はずいぶん明るくなるぞ。

決めること5:ペットの情報を、子どもも持つ

はぐれたとき、預けるとき、病院にかかるとき。必要になるのは情報じゃ。 ガイドラインは、備蓄の優先順位の2番目に「情報」を置いて、こう書いておる。

ペットの写真(印刷物とともに携帯電話などに画像を保存することも有効) 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」

親のスマホだけに入っていると、スマホが壊れたり、充電が切れたりしたら終わりじゃ。 子どものスマホにも同じ写真がある。これが、離れて暮らす家族ならではの強みになる。

  • 写真は全身と顔:模様や体の大きさが分かるもの。子どものスマホに「災害用」のアルバムを作って入れておく
  • 名前・年齢・持病・薬・かかりつけ病院:紙1枚に書いて、親の家と子どもの家に1枚ずつ。預ける相手にそのまま渡せる
  • 迷子札・鑑札・マイクロチップ:犬は鑑札と狂犬病予防注射済票の装着が法律で決まっておる。マイクロチップは、登録の連絡先が親の古い電話番号のままになっていないかを確かめておく

マイクロチップは、2022年6月から販売される犬猫への装着が業者の義務になった。それより前から飼っている子は、入っていないこともある。 入っているかどうかは、かかりつけの動物病院で読み取ってもらえるから、次の通院のついでに聞いてみるよう、親に伝えてくれ。 登録内容は、環境省の登録サイト(犬と猫のマイクロチップ情報登録)で変更の手続きができる。

そなえじぃが床にひざをつき、スマートフォンを横に構えて、クッションの上でおすわりする小型の犬の写真を撮っている。ひなたちゃんが横から画面をのぞきこんでいる。手前の低い机には白紙と首輪と薬袋が置いてある。
写真は親の家と子どもの家、両方にあると安心じゃ。

犬と猫で、ここが違う

同じ「ペットの防災」でも、犬と猫ではつまずくところが違う。親が飼っているのがどちらかで、電話で聞くことも変わってくるぞ。

犬:運ぶ人と、鳴き声

中型・大型の犬は、高齢の親だけでは運べないことがある。車と運ぶ人を先に決めておく。ガイドラインにも、避難所で吠えて迷惑をかけるため、やむを得ず車中での避難になったという体験が載っておる

猫:捕まえて、キャリーに入れる

猫は災害のとき隠れて出てこない。捕まえるだけで時間がかかる。キャリーを出しっぱなしにして慣らしておくのがいちばんじゃ。やり方は猫がキャリーを嫌がる|4週間プログラムに書いた

それから、親のペットも、たいてい年をとっておるということを忘れんでくれ。 親と同じだけ長く暮らしてきた子は、足腰が弱っていたり、目や耳が遠くなっていたり、持病の薬を飲んでいたりする。 老犬・老猫は、知らない場所や寒さ暑さで体調を崩しやすい。避難所よりも、静かな預け先や在宅避難のほうが向いていることもある。 どこで過ごすのがその子にとって楽かは、かかりつけの獣医師に一度聞いておくと安心じゃ。

台風のように前もって分かる災害なら、ペットのいる家は早めに動くのが基本じゃ。 高齢の親とペットの組み合わせなら、なおさらでな。くわしくは台風が来る前に、ペットのためにやる3つのことを合わせて読んでくれ。

明るい居間で、白い靴下のそなえじぃがしゃがみ、左ではリードをつけた柴犬がおすわりし、右ではひなたちゃんが洗濯ネットに入ってキャリーの横に落ち着いて座っている。
犬はリード、猫は洗濯ネットとキャリー。うちの子に合わせて考えるんじゃ。

やらなくていいこと

ここまで読んで「全部やらんといかんのか」と思ったかもしれん。そんなことはない。 むしろ、やらなくていいことを先に知っておくと、親子とも気が楽になるぞ。

高いペット用防災セットを買って送らなくていい

中身の多くは、いつものフード・水・トイレ用品じゃ。食べ慣れたフードのほうが、災害のときにも食べてくれる。まず1袋多く送るだけで十分じゃ

一度の電話で全部決めなくていい

5つを一気に聞くと、親は「責められている」と感じやすい。1回の電話で1つ。月に1つでも、半年で終わる

「この子を手放したら」と言わなくていい

親にとってペットは家族じゃ。手放す話から入ると、話そのものが止まる。「この子を守るために」という言い方で十分に伝わる

そなえじぃ

防災の話は、正しいことを言うほど相手が黙る、ということがある。 親を説得しようとせんでよい。ペットの様子を聞いて、足りない物を送って、写真をもらう。 それを続けているうちに、備えは勝手に積み上がっていくんじゃ。

今日できる3つのこと

最後に、今日すぐできることを3つだけ。どれも5分で終わるぞ。

「この子のごはん、何日分ある?」と聞く

防災の話としてではなく、ペットの話として。5日分に足りなければ、いつものフードを1袋注文して送る

写真を送ってもらう

全身と顔を1枚ずつ。子どものスマホに「災害用」アルバムを作って入れる

預け先の1番目を決める

近所の誰か。すぐに決まらなければ、まず子どもの家でよい。決めたことは親にも伝えておく

日の当たる部屋で、白い靴下のそなえじぃが木の机でメモ帳に鉛筆で書きこみ、湯のみの湯気が立っている。向かいの椅子にひなたちゃんが座って見ている。
まずは今日、メモ1枚から始めればよい。

よくある質問

Q. 離れて暮らす親のペットの防災、まず何から?

A. フードと水が何日分あるかを聞くことからじゃ。環境省のガイドラインは、ペットのフードと水を少なくとも5日分、できれば7日分以上としておる。足りなければ、いつものフードを子どもが1袋多く送ればよい。親に買いに行かせるより、ずっと早くて確かじゃ。

Q. ペットと避難所へ行けば、同じ部屋で過ごせる?

A. 限らん。同行避難は一緒に逃げる行動のことで、同じ部屋で過ごせるという意味ではない。環境省のガイドライン改訂案では、避難所での過ごし方を同室・別室・屋外・ペットのみ車中の4つに分けて整理しておる。受け入れ方は避難所ごとに違うから、親の住む自治体で前もって確かめておいてくれ。

Q. 親が入院したり、避難所に行けなかったりしたら?

A. 預け先を複数決めておくことじゃ。ガイドラインも、指定避難所以外に、親戚や友人など複数の一時預け先を探しておくことを勧めておる。近所の人、動物病院やペットホテル、被害を受けにくい遠くの家族の家。この順で考えると決めやすいぞ。

Q. 遠くに住んでいて、何もできない気がする…

A. そんなことはない。写真と情報を持つ、遠くの預け先になる、フードを送る。この3つは、遠くに住む子どもだからこそできる役目じゃ。近くにいないことが、そのまま強みになるんじゃよ。

  • 環境省「災害、あなたとペットは大丈夫? 人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」
  • 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(平成30年)
  • 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案(2026年6月 パブリックコメント資料)
  • 環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録」

本記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。ガイドラインの改訂版は2026年10月時点で正式公表前のため、改訂案の内容は変わる可能性があります。 避難の判断はお住まいの自治体が発表する避難情報に従ってください。避難所のペット受け入れ条件は自治体・避難所ごとに異なります。 ペットの持病や薬、療法食の備えについては、かかりつけの獣医師にご相談ください。